損切ができないのは哲学!?
「損が小さいうちは“ストレス”だけど、損が大きくなると“哲学”になる」という話を聞いた。思考停止して、損に意味を見出そうとしはじめる。
でも、それはもう“投資”ではなく、“自分との戦い”。
「損切りができない」というのは、デイトレをする人だけでなく、株式投資や資産運用をする人の多くが直面する心理的な壁で、いくつかの心理学的な要因が絡んでいます。
損切りができない心理を読み解いて、損切りを上手にできるメンタルを手に入れよう。
1. サンクコスト効果(埋没費用の誤謬)
- 「ここまでお金を入れたんだから…」と感じてしまう心理。
- すでに失ったお金(=サンクコスト)は本来意思決定に関係ないのに、それを無視できない。
- 例:「10万円で買った株が今5万円…でも戻るかも」と、損切りせず持ち続けてしまう。
2. プロスペクト理論(損失回避バイアス)
- 人は「得をする喜び」より「損をする痛み」を強く感じる傾向があります。
- 小さな損を確定させるのがつらくて、それを避けようとする。
- 結果として「含み損」は精神的にマシだから放置しがち。
3. 現実逃避(否認)
- 損失を認めることは、自分の判断が間違っていたと認めること。
- それがツラすぎて、「見なかったことにする」「戻るのを祈る」みたいな心理が働く。
- 完璧主義の人や、理想主義・夢見がちな人が陥りがち
4. 保有効果(Endowment Effect)
- 一度自分が持ったものには、実際以上の価値を感じてしまう。
- 「この株には将来性があるはず」「こんなに下がるはずがない」と思い込んでしまう。
5. 確証バイアス(Confirmation Bias)
- 自分の希望に合う情報ばかりを探して、「大丈夫、戻る」という都合のいい材料ばかり集める。
- 冷静な判断がどんどんできなくなっていく。
どんなときに、どんな心理状態で損切できないか?
多くの投資家が同じような経験をしていて、損切りできないのはまったく珍しくないこと。
その心理状態から損切りできないのはすごく人間らしいけど、投資においては“致命傷”になりやすい。
人はどんなときに、どんな心理状態で損切りできなくなるのか?
① 📉【買いポジションで下がり続けるとき】
「いつか買った値段に戻るはず」と信じてホールドしてしまう。
心理の背景:
- 希望的観測(Hope bias)
→ 根拠のない「戻るはず」への期待。冷静な分析ではなく“願い”が判断基準になってる。 - 損失回避バイアス
→ 損失を確定するのが怖くて、“見て見ぬふり”をしてしまう。 - アンカリング効果
→「買った価格」に執着して、現在の事実(下落トレンド)を無視してしまう。
② 📈【空売りしていて株価が上がり続けるとき】
損失が拡大してるのに「そのうち下がる」と信じて耐え続ける。
心理の背景:
- マーケットに逆らう過信
→ 「こんなに上がるわけがない」「過剰評価だ」と思い込む(でも市場は非合理的に動くことも多い)。 - 自分の読みへの執着
→ 「下がるはずだったのに!」という感情が、現実よりも強くなる。 - 損失を“自分の過ち”として受け入れたくない
→ 損切=自分が間違っていた証明、だから耐えてしまう。
③ 😱【損が小さいときより、損が大きいときの方が感覚がマヒして損切りできない】
投資の「心理の罠」のひとつ。
損が大きくなればなるほど、人間の感覚はマヒしていく。
これは心理学的にも証明されているらしく、いくつかのメカニズムが働いている。
なぜ損が大きいと感覚がマヒするのか?
1. プロスペクト理論 – 損失に鈍感になる
- 初めは「1万円の損」でドキドキするけど…
- それが「10万円の損」になっても、「もうどうでもいい…」って気分になる。
- 理由は:人間は 損失が大きくなるほど、感じる“苦痛”が比例しなくなる。
- つまり、10万円の損=10倍のストレスではなく、「5倍くらい」しか感じない。
2. “絶望ゾーン”に入る
- 損が一定ラインを超えると、「もう取り返せない」「死んだふりしよう」みたいなモードになる。
- このときの心理は、現実逃避+無力感(=学習性無力感)に近い。
- 一種の防衛本能で、心を守るために感情を切ってしまう。
3. 中毒に近い反応が起きる
- 損を抱え続けていると、チャートを眺めることが習慣になって、
“興奮”と“不安”がミックスされた状態がクセになることも。 - それがまた判断力を奪って、冷静な損切りが遠のく。
4. 「もう少しで戻るはず」幻想が強化される
- 損が大きくなるほど、「今切るのはもったいない」という気持ちが強くなる。
- 自分が納得できる「理由」「材料」「ニュース」「チャートの形」だけを見て、都合のいい未来を信じてしまう。
大きな含み損を抱えたときに実際に起こる行動例
- チャートを見ても、感情が動かなくなる(=思考停止)。
- 口座残高が減ってるのに、「それはそれ」として受け入れてしまう。
- 「ナンピンしてやる」というヤケ的な行動に出る。
損切りを上達するためにどうするか?
「心」が邪魔するなら「仕組み」で戦う
✔️ 対処法
- エントリー時に“逆指値”を必ず入れる
→ 「〇%(○円)下がったら切る」と、事前にルールを明確に。感情が出る前に判断を終わらせる。冷静さを保てる。
損切ポイントを事前に決めるには、エントリーポイントも重要になる。よりリスクが低く、リワードの高いエントリールールを確立することが重要。 - 「戻るまで待つ」はNGと自分に言い聞かせる
→ マーケットは自分の“買値”なんて全く気にしていない。 - 「生き残る」ことが最優先と考える
→ 損切りは“敗北”じゃなく、“戦略的撤退” “リスク管理”と考える。資金を守ることでチャンスを待てる。 - 1日の損失上限を決めておく
→ 例:−5万円以上負けたらその日はトレード終了 など - トレード日記を書く
→ なぜ損切りできなかったのか? どういう感情だったか? 記録することで学びの材料にする。 - 定期的にポジションを見直す“現状把握”を書く
→ デイトレではなく、スイング・持ち越し銘柄について、「今、相場環境はどうなのか?」「今、自分のポジションはどうなのか?」「今、自分はどう感じてるか?」を文字にすると、マヒしてることに気づける。
都合の良い理由や情報だけに左右されないこと。
最後に:
もし「損切りができない」と感じたら、それはメンタルが弱いのではなくて、「人間として当たり前の反応」。
投資ではそれが仇になるから、いかに感情と距離を置けるかが勝負。
投資は「正しい選択をすること」よりも、
「間違えたときにどう対処するか」が圧倒的に重要です。
損切りができなかった自分を責めすぎず、
「それでもマーケットに残り続ける方法」を見つけていくことが、本当の勝ちへの道。
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